ネヴィルのアトリエ訪問(オランダ・アムステルダム)

2018年03月17日

 “人形劇界のスーパースター”、ネビル・トランタ—。「スタッフド・パペット・シアター」という名前で、世界中で活躍している。脚本・美術・演出・出演を一人で手がけるネビルと、マネジメントのすべてを行うヴィムの二人からなる。
https://www.stuffedpuppet.nl/

3月下旬、まだまだ寒いアムステルダム。コンセルトヘボウで待ち合わせて、一緒にバスに揺られること30分、アムステルダム郊外の住宅街にあるネヴィルの自宅兼アトリエを訪問した。

30年前に新居を構えて以来、殆ど全てのレパートリーが、ここで生み出されている。ヴィムがしつらえた素敵な日本風庭園(枯山水あり)を見学した後、ダッチ・ビールで乾杯。リビングには、ネヴィル自身の手による大きな絵画と、アボリジニの絵画が交互に並んで飾られている。

オーストラリア出身のネヴィルは、アボリジニのアートから影響を受けてデザイン的に優れた点描画を描き続けている。絵描きとしても素晴らしい。現在、リトアニアの国立人形劇団のために美術・演出を手がけるジャリ原作「ユビュ王」のデザイン画を見せてもらったが、ものすごくおしゃれなグラフィティアートみたいなタッチだった。

ネヴィルのアトリエ
ネヴィルのアトリエ

でもネヴィルがすごいのは美術だけではない。人形操演の技術、脚本のすばらしさこそ、ネヴィルが世界の人形劇のトップランナーたる所以。

舞台芸術は見慣れているが人形劇を見慣れていない一人の友人にネヴィルの上演を見せたら、「世界トップクラスのバレリーナのような極めて精緻な身体操作技術がある」と驚いていた。本当に優れた人形劇人は、ネヴィルのように、自分の身体も人形の身体も同じように、完全にコントロールできるように見える。

老人問題を扱う『マチルダ』、中東問題を扱う『アフガニスタンのパンチとジュディ』、移民問題を扱う『バビロン』・・・・・・時代に即した、論争を呼ぶテーマばかりだが、いずれの作品もハッとするような洞察とユーモアに満ちている。なにより、どんなテーマを扱っても詩的な美しさがある。選曲のセンスも素晴らしいので、音楽とネヴィルの演技がピタリと重なるとき、おもわず涙が出てしまう。たとえば『マチルダ』での、アルヴォ・ペルトのピアノ曲と最期のダンス。

教育者としても極めて豊富な実績があり、フランスの国立国際人形劇研究所IIM(https://www.marionnette.com/)やドイツの州立人形劇研究所FIDENA(https://www.fidena.de/)など多くの人形劇人養成機関で人形劇人の指導を続けている。

© 2018 DEKU  All rights reserved
Powered by Webnode
無料でホームページを作成しよう! このサイトはWebnodeで作成されました。 あなたも無料で自分で作成してみませんか? さあ、はじめよう