スペイン リェイダ人形劇フェスティバル

【Lleida, Fira de Titelles】https://www.firatitelles.com/es
古い建物の並ぶ小さな魅力的な町。巨人人形の伝統がある町。
この町で毎年行われているのが、リェイダ人形劇フェスティバル、カタルーニャ語で"Fira de Titelles"。
かなり町に浸透しており、町中の人々が参加している。小さな路地が、人形と人であふれる。上演会場は沢山あるが、小さい街(例えば飯田よりずっと小さい)のなかに点在しているので、とても回りやすい。風光明媚でご飯も美味しい。「プロ向け」のコミュニケーション・スペースも快適。参加費激安(下記全部見て、さらにランチとお酒も色々込みで総額五千円)。
全体として素晴らしい人形劇フェス。今回鑑賞した中で大傑作が4つもあった。フェス主催者のオリオル夫妻の人柄も良い。
以下は2018年の記録。
- TrukiTrek ★★★
https://www.trukitrek.net/mrt.html
大傑作。人形劇と、上質なアートアニメの融合。
完全なノンバーバル。万人向け。
幼い頃母をなくした駅員のおじさん。廃駅寸前、急行が通り過ぎるだけの列車に向かって、毎日ベルを鳴らし、見守るだけの仕事。その駅へ一匹の犬がやってくる。あらゆる方法で追い払うおじさん、必ず戻ってくる賢い犬。次第に育つ友情。
TrukiTrekは元々映画監督をしていた二人が始めた人形劇カンパニー。映画的な編集術が感じられる、スピーディーで完璧に構成された作品。
- CÍA. JAVIER ARANDA ★★★ 最優秀作品賞など三冠 https://www.javieraranda.es/
作品名:VIDA
傑作。技術の高さ! 目線の正確さ。カタルーニャ語でなくスペイン語。でも7割ノンバーバル。ウニマスペインのボス、イドヤ女史も大推薦。手と指と少しのぼろきれで作る人形。劇中劇から窺える声色の多様さ、うまさ。イドヤさんによれば、ものすごく謙虚で外に出ていかない性格なので、実力に反してスペインでもあまり知られていないとのこと。
- CIA. XIRRIQUITEULA TEATRE ★★★ 子供審査員賞受賞 https://www.xirriquiteula.com/
作品名:Laika
傑作! ソ連の風景。懐かしのHPO機二台、何重にも映し出す。ライカと航空局の女性の友情。コメディ。色合いがLOMO的。インテリ受けしそう。このグループは森の音楽祭に来日経験ありとのこと。完成度超高し。製作一年とのこと。
- Pickled Image ★★★ https://pickledimage.co.uk/
作品名:Coulrophobia
傑作!! イギリスのブリストルの人形劇団。「道化恐怖症」というタイトル。段ボールの世界で生きるクラウン二人。テンポ良くギャグを繰り出す。観客を頻繁に舞台に登場させるが、使い方がまた最高にうまい。
ふと、舞台の上で芝居台本が落ちているのを見つけ、筋書きを改めて読み直すクラウン二人。ここまで筋書き通りに進んでいる。次の場面は、「即興!」と書かれている・・・ 道化芝居のお約束ごとを破ってしまいがちな道化二人。道化芝居から脱線すると、ボス道化(人形)が別世界のマイクロフォンから怒鳴り出す! この、ボス役の人形操演もすごくうまい。劇中劇のパンチも可笑しい。
そのうち境界を破りだし、崩壊していく舞台。うっすらうっすら感じるホラー感、でもずっと大爆笑。天才の仕事
- Onírica Mecánica ★★
https://oniricamecanica.com/?lang=en
ディズニーのアリスが原作。夜、ディズニーの歌で始まり。カエル鳴き声、いなくなるアリス。懐中電灯で探す人々。ちょっとミステリー風味の始まり、だが「ここで起きるのは全てノンセンス」、という最初のアナウンスの割にはあまりnonsenseではない。ヴィクトリア朝要素は無し。デジタルサイネージ、新しいライティング装置を色々と使用。技術的に興味深い
- Le Clan des Songes ★★
https://www.clan-des-songes.com/
作品名:Bout á Bout
良い作品。いわゆる「黒の劇場」のテクニック。
真っ黒なバックに浮かび上がる縄が、いろんな形に変化する。
操演が正確。縄だけをつかった、見立てを楽しむ作品として、かなり完璧。
ノンバーバル。子供でも楽しめる。
- BRUNETTE BROS ★☆ 舞台美術賞
https://www.facebook.com/BrunetteBros/
役者は4人のピエロ。二〇世紀初頭ぽい趣味でゴテゴテペイントされたトラックを何台も引き連れて、仮設サーカス広場を再現。美術の熱量がやばい・・・・・・。観客は、謎のガジェット満載トラックの回りを歩かされながら、ポップコーンくばるピエロにいじられ、ポプコーン機械が壊れて暴走する小芝居を眺めさせられる。開始3〜40分経過後、ようやく本番的な見世物がスタート。スカートの下を小さなサーカステントに見立て、両足の間で小さな人形が人間砲などの芸を見せる。観客に歩き回らせる参加型なので、最後のほうにはなんだか意味不明なほど盛り上がっていた。一生懸命で憎めない、フェス内の愛されキャラ感。(一八世紀の路上人形劇もこのくらいハチャメチャだったとしたら、よくレッシングやゲーテがその芸術性まで見通したなあ、と途中で意識が飛んで一八世紀に想いをはせた。)
- Teatro Gioco Vita★ https://www.teatrogiocovita.it/
作品名:El cielo de los osos
https://www.youtube.com/watch?v=2Im-8OrfpSg
アクロバットしている板付き二人からスタートする影絵。この劇団は影絵でとても有名で、一時期本当に素晴らしかったらしいのだが、その良さがまだ分からなかった。またの機会を狙いたい。
- A2manos ★☆
https://www.a2manos.com/
作品名:El Cruce
一人芝居。ノンバーバル。小学校の図形パズル組み合わせを使って青年の生活を描く。アタッシュケース一つの中の小さな舞台。歩いたり海に行ったり。ダンスに行って酔っ払って小便、など・・・ 図形パズルが人格を持ち始める、という可笑しさ。
- Mimaia-Teatro ★
https://mimaia.blogspot.de/
作品名:Roig Pel-boig
Toni Rumbau*によれば詩的でとてもよい(「しかし観客は不満足なのは分かる、しかし僕は演者を良く知っているから良い作品になり得るということが分かるんだ」)。私には退屈だった。タイプライター、書いたことが本物になる。想像力を描く作品。しかし音楽が生演奏なのに上手くない。
主演の人は、東京のプーク人形劇場でも上演したことがあるとのこと。
*Toniはスペインの人形劇研究者、Puppetring(https://www.puppetring.com/)主宰
以下は参考映像無し
- VINCENT DE ROOIJ ★★ https://www.vincentderooij.nl/
作品名:BARKO
https://www.vincentderooij.nl/pages/?page_id=91
10分だけのショー。観客は各回10名ほど限定、本物の飛行機に乗り込む。機長の爆笑ショー。揺れたり、パニックになったり、機長がパラシュートで降りちゃったり。
- Puzzle Theatre ★ https://www.puzzletheatre.com/
作品名:Plastique
カナダ在住のブルガリア人夫婦カンパニー。これはビニール袋でその場で鳥に見立てて演じる人形劇。このカンパニーはいつも一つの素材だけ(ティッシュ一箱、とか)で一作品作りあげることにこだわっているらしく、毎回それなりに出来ているのだけど、人形がそれだけシンプルなら、台本や、物の振る舞いのアイディアがもっと爆発的に面白くあってほしい。それがない
- LOS TITIRITEROS DE BINÉFAR ★ https://www.titiriteros.com/
作品名:CHORPATÉLICOS
https://www.titiriteros.com/es/chorpatlicos-e21.html
たみこさんオススメ、パコさんの劇団。
しかし今回はパコが出て折らず、おばさんと若い男二人、どちらも役者がいまいち。(舞台美術は、スペインの古い味わいが出ていて中々よさげ。)ガルシア・ロルカなどスペインの重要な詩人を歌に乗せて子供に紹介するみたいなショーなのだが、音楽がみうらじゅんが十代にカセットに撮っていたロック並みに下手なので台無し。これを舞台で見ないで詩集を読んでくださいと子供に言いたい。
- ALAUDA TEATRO ★ https://alaudablog.wordpress.com/
作品名: Cristóbal Purchinela
https://alaudablog.wordpress.com/cristobal-purchinela/
プロセニアムの上で演じるスタイル。伝統的なスペイン版パンチ芝居。死に神をやっつける、鳥、ワニ、・・・。「クリストバル」というのが、カタルーニャのパンチ。伝統的スタイルをきちんとやっていて素晴らしいのだが、その後バルセロナのLa Puntual劇場の創設者のプルチネラ劇を見てしまい、そちらの方がパフォーマンスや客とのやりとりがずっと面白かったので・・・。