日本で国際人形劇祭……

2021年03月08日

2023年くらいから、国際人形劇祭を、日本で始めたい。人形劇の舞台芸術としての可能性がいまどれほどまでに拡がっているのか、日本の人たちに見て貰いたいから。そして日本の人形劇をもう少し海外に押し出していきたいから......。人形劇(オブジェクトシアター含む)は、オルタナティブシアターや、プロップコメディや、あるいは普通の俳優劇とも、垣根がなくなってきている。でも、そうしたお隣の舞台芸術ジャンルと混ざりながらも、人形劇の長い長い歴史を元に、人形劇でしかできない新しい表現も、つぎつぎと生まれている。

日本ではまだ文楽以外の人形劇は教育分野を中心にアマチュアが行うものという見方が強く、人形劇の舞台芸術としての可能性や素晴らしさが十分に知られていない。もちろんその理由の一端は、日本のプロ人形劇人自身が、その新しい可能性を十分に分かっていないから、ということにあると思う。この状況を変えるには、やっぱり飛びきり面白いものを皆で一緒に見て、人形劇の新しい姿と出会って、考えて、どんどん作っていくしかない。でも国内では、こんなに進んでいる海外人形劇のクリエーションが披露される場所が、まだとても少ない。

もし、日本に、こんなフェスティバルがあったらどうだろう。
・世界で(特にヨーロッパを中心に、)過去数年〜10年程度の間に発表された人形劇作品のうち、一番面白いものが、一週間くらいで集中的に見られる。
・作品の選定基準は、芸術的な高さ、革新性、そしてすぐれたユーモアがあること(ユーモアは日本の人形劇に一番欠けている要素だと思うから)。
・夜はビールだかウーロン茶かを片手に屋外テントに集まって、バンドの演奏や(音楽の才能に秀でた人形劇人は多い)、若手の実験的な作品が披露され、その日の演目について議論できるスペースがある。
・期間中は、前日の演目の批評が載った日刊紙(リソグラフ)を毎朝発行する。
・海外作品の上演だけで無く、日本の人形劇のショーケースも開催して、海外のフェスティバル・ディレクターを招聘して日本の人形劇の海外公演もあと押しする。

こんなフェスティバルができたらいい。芸術性・革新性・ユーモアにフォーカスした、日本で初めての国際人形劇祭。日本の人形劇人に来てもらいたい。それに人形劇ファンだけでなく、ひろく舞台芸術を愛する人たちに、人形劇の可能性を知ってもらいたい。

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日本で人形劇というメディアが注目された黄金時代は、80年代くらいまでで一旦終わっている感じだ。でも世界的に見れば、もちろん、そのあとも人形劇芸術の発展は続いている。ヨーロッパで人形劇の芸術的転回が起きた19世紀末以降、2021年の今まで日進月歩を遂げた人形劇の、その技術や美術の最新の成果が、いまの日本の人形劇界に反映されているとは言いがたいと思う。

日本国内の人形劇団にも、(私がその構成員であり熱狂的ファンでもある人形劇団プークを含めて、)その作品の一貫性や完成度の点で世界水準のものは沢山あると思う。それに、文楽があるからか、日本の人形遣いの操りの技術水準は、世界的に見ても凄く高いと思う。でも、革新性という点を考えてみると、どうだろう。

ヨーロッパ各国の人形劇祭では、日本の作品が上演されることはまれだ。とりわけ、80年代以前の日本の人形劇界が親しかった旧東側諸国ではなく、西側ヨーロッパで日本の人形劇が招聘されることは、文楽をのぞいて、ほとんどない。

それでも、ときどき、西側ヨーロッパのフェスティバルディレクターから、「文楽や、世界最古の人形劇理論(『難波土産』の虚実皮膜論のこと)を生んだ人形劇大国日本の、最新の成果」を紹介してほしいと頼まれることがある。けっこう困る。ヨーロッパでの人形劇の変化に追いついているような作品が、簡単には見付からないからだ。その上、ヨーロッパの人形劇界ではすでに世界的ツアーを視野に入れたノンバーバルの作品が増えていて、日本から招聘する作品も、字幕がなくても伝わることが求められる。でも、日本の人形劇団の多くは、世界に売り出すことをあんまり考えていないので、そうした作品を探すのは難しい。さらに、すぐれたユーモアのある作品、あるいはみんな観客が笑って盛り上がれるような作品を期待されている場合、話はいっそう難しくなる。

考えてみれば、ヨーロッパ各地では、かれこれ1960年代くらいから半世紀以上にわたって、無数の芸術的人形劇フェスティバルが生まれ、集った劇団たちがしのぎを削ってまだ誰も見たことがない人形劇を観客に届けようとトライ&エラーを続けてきたのだ。その蓄積に、日本の現代人形劇が比肩できないのも、無理ないことだと思う。もちろん日本にも、「いいだ人形劇フェスタ」のような、規模においては世界的に見ても最大級の人形劇フェスがある。ただしその目指すところは、人形劇の芸術としての可能性の追求というよりは、人形劇を愛する人々が一年に一度集う、趣味と憩いの場所......という側面が重視されていると思う。私は「いいだ人形劇フェスタ」が大好きで、このフェスティバルは日本の人形劇界にとっての大動脈というか、今後も決して無くしてはならないものだと思うし、今後も通い続けると思うが、それでももう一つ、また別の意味で日本の人形劇のクリエーションを後押しするような、人形劇祭が必要だと思う。

 どうでしょうか、人形劇と舞台芸術を愛するみなさん〜。2023年くらいを目安に、少しずつ準備をしていきたいと思っています。とはいっても、会場もなにもまだ見付かっていませんが......。これから色々とお知恵をお貸し下さい〜!

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